”最高裁判決” 親の望みと子の利益

 生命倫理関連については関心をもってきたが,結論を簡単には出しがたい領域という印象をもっている。以前から法整備のための調査や議論は続けられてきたけれども,上のような複雑な領域にある価値対立的な問題でもあり,日本では未だ立法にはいたっていない。滝井・今井裁判官の補足意見にあるように議論をつくしたうえでの立法による法秩序上の解決を待つべきだろう。今現在,親の望みと子の利益について考えている。親の子を持つ自由をどう考えるか。
 個人的な感情では,「生きる希望」として夫の精子を保存して,子を持ちたいと考える妻(母)の気持ちに共感をするところが大きい。放射線医療等において失われていくものへの想いと,それを少しでも食い止めたいという切実な気持ちと,配偶者の死の前後において経過的に起こる心理的な変化と,「父」としての亡き配偶者への想いの変化,身近な者の心理的な快復の過程を想像すれば,ただただ痛ましい気持ちになるのは事実である。
 なお判例評釈がウェブ上にもあるが膨大な関連資料中の一部にすぎないので判断には早計,敢えて引用しない。もう少し考えてみたい。深遠であり,非常に難しい問題だとおもわれるから。