”鉱山本”田中宇『マンガンぱらだいす』(風媒社、1995年)

 簡単にメモ。京都にあるマンガン鉱山労働者のノンフィクションである。私は小学校時代に生野銀山に行ったことがあるが,見学用順路から伸びる坑道は細く,薄暗い中でみる労働者を象った蝋人形が子供の恐怖心を煽ったものだった。炭鉱労働やその他の生計のための働きを通じて,彼らの戦前から戦後の歴史と個人史をかいまみることが出来る本。
 日本とは相当異なる社会規範や慣習で相違点をもつ朝鮮半島であるが,この近くて遠い国を,日本に住んでいる定住外国人の立場からの証言は,私にとっては新鮮なものだった。鉱脈の形成や見つけかた,公的な鉱業権や契約上の採掘権,山師としての関係者など,興味深い記述が豊富であった。
 とりわけ個人的に印象に残ったのは,命の終わりに,じん肺による呼吸不全による苦痛を麻酔で取ることによって,「息苦しさを感じないと,必死に呼吸をしようとする意志が失われて,からだをますます弱らせる」という言葉。痛みを乗り越えて生きようとする人間の力について,幼馴染の闘病の最後と重なると同時に,人間の生命力の凄まじさや神々しさゆえに。
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丹波マンガン記念館:http://www6.ocn.ne.jp/~tanbamn/
生野銀山http://kobe-mari.maxs.jp/asago/ginzan.htm